七五三の準備で疲労困憊。「お金」と「見栄」に振り回された母親の後悔

「もう、本当に疲れた……」

リビングのソファに倒れ込み、着物から着替えたばかりの洋服のシワを伸ばしながら、
私は深い深いため息をついた。
隣では、3歳の娘と5歳の息子が、千歳飴の袋を振り回してはしゃいでいる。

34歳の私と夫、そして二人の子供たち。
今日は、ずっと前から準備を進めていた、娘の三歳と息子の五歳の七五三のお祝いの日だった。

朝早くから美容院での着付けとヘアセット、
写真スタジオでの前撮り、
そして神社でのご祈祷、
最後は両家の祖父母を招いての食事会。

分刻みのスケジュールをこなすため、私は数ヶ月前から準備に奔走していた。

「一生に一度の晴れ姿なんだから、ちゃんとやってあげなきゃ」

その思いだけで、仕事の合間を縫って神社の予約を取り、
写真スタジオの衣装を比較検討し、食事会のレストランの手配をした。
夫は「任せるよ」と言うばかりで、具体的な手伝いは一切なし。

そして何より私の頭を悩ませたのは、「お金」の問題だった。

写真スタジオでの撮影データ付きアルバムセットで約10万円。
私の着物レンタルと着付け代で約3万円。
神社への初穂料が二人分で1万円。
両家を招いての食事会代で約6万円。

合計すると、軽く20万円を超えてしまったのだ。

「ちょっと高すぎない……?」
夜な夜な電卓を叩きながら、私は青ざめた。
でも、「一生に一度だから」「両親も楽しみにしているから」というプレッシャーから、
予約をキャンセルすることも、ダウングレードすることもできなかった。

そして迎えた当日。
慣れない着物で機嫌が悪くなる子供たちをなだめすかし、
遅刻しそうになる両親を気に揉み、
笑顔を引き出そうと必死に声を張り上げるカメラマンの後ろで、私も必死に作り笑いを浮かべていた。

神社でのご祈祷中も、息子が飽きて歩き回りそうになるのをヒヤヒヤしながら見守り、
食事会では両家の親の会話を繋ぐことに必死で、私は料理の味なんて全く覚えていなかった。

すべてが終わって家に帰り着いた時、
私の中に残っていたのは、達成感でも幸福感でもなく、
ただひたすら重くのしかかる「疲労感」と、「お金を使いすぎた」という後悔だけだった。

「見栄」と「理想」がもたらした疲労の正体

翌日、私は燃え尽きたようにベッドから起き上がれなかった。

SNSを開けば、他のママ友たちがアップした七五三のキラキラした写真が目に飛び込んでくる。
「素敵な神社だね!」「着物、すごく似合ってる!」というコメントの嵐。

私も昨日、必死に撮った数枚の写真をアップしようとしたけれど、
なんだか虚しくなってやめてしまった。

どうしてこんなに疲れてしまったんだろう。
どうしてこんなにお金をかけてしまったんだろう。

冷静になって考えてみると、私がこだわっていたのは「子供のため」ではなく、
「周りからどう見られるか」という「見栄」だったのかもしれない。

「ちゃんとしたスタジオで撮らないと可哀想」
「両親を良いお店に連れて行かないと面子が立たない」
「SNSで『いいね』をもらえるような七五三にしたい」

そんな「理想の七五三」の呪縛に囚われて、
身の丈に合わない出費をし、自分を極限まで追い込んでしまったのだ。

夕方、仕事から帰ってきた夫に、私は思い切って本音を打ち明けた。

「ねえ、昨日の七五三、すごく疲れたよね……お金もかかりすぎたし」

夫は少し驚いたような顔をしてから、苦笑いした。

「ああ、俺もそう思ってた。君がすごく張り切ってたから言えなかったけど、
あんなに分刻みのスケジュールにしなくても良かったんじゃないかなって。
子供たちも最後の方、クタクタで不機嫌だったし」

夫の言葉に、私はハッとした。

私は「完璧な七五三」を作り上げることに必死で、
主役である子供たちの気持ちを、完全に置き去りにしていたのだ。
着物で苦しい思いをさせ、写真を撮るために笑顔を強要し、
親の都合で振り回してしまった。

「私、見栄張ってただけだったのかもしれない。ごめんね……」

私は自分の愚かさに情けなくなり、思わず涙をこぼした。

夫は私の肩をポンと叩き、優しく言った。
「でも、子供たちの晴れ姿、可愛かったよ。両親も喜んでくれたし。
ただ、次はもっと気楽にやろうな」

「次」に向けての手放す勇気

息子の七歳の七五三は、まだ2年先だ。
でも、私は今回の失敗を胸に固く誓った。
「次は、絶対に無理はしない」と。

数日後、私は「次の七五三でやらないことリスト」をノートに書き出した。

1. **高額なスタジオ撮影はしない:** 写真は出張カメラマンにお願いするか、自分たちでスマホで撮る。
2. **親の着物レンタル・着付けはしない:** 私は少しきちんとしたワンピース、夫はスーツで十分。
3. **食事会は無理に豪華なレストランにしない:** 自宅で仕出し弁当を頼むか、子供の好きなファミレスでもいい。
4. **同日にすべてを詰め込まない:** 撮影とご祈祷は別日に分ける。

このリストを書き出しただけで、なんだか心がスッと軽くなった気がした。

七五三は、子供の健やかな成長を神様に感謝し、家族で祝う行事だ。
そこに、見栄や世間体、高額なお金は必要ない。
親が笑顔で、子供がリラックスして楽しめることが、何よりも大切なのだから。

今回の七五三で、私は高い授業料を払うことになってしまった。
でも、その代わりに「行事に振り回されない」ための大切な教訓を得ることができた。

SNSのキラキラした写真に惑わされるのは、もうやめよう。
私たち家族の「等身大のお祝い」を、これからも見つけていきたいと思う。
そして次の七五三では、心からの笑顔で子供の成長を祝えますように。

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