休日の午後。
近所の公園で、娘を砂場で遊ばせながらママ友と立ち話をしていた時のこと。
「うち、今月から英会話とベビースイミング始めたの。月2万くらい飛んでいくけど、まあ将来への投資だよね」
にこやかに笑うママ友の言葉に、私は「すごいね、えらい!」と笑顔で相槌を打ちながら、心の中では激しい焦りを感じていた。
2歳で月に2万円。
じゃあ、小学生になったら? 中学生になったら? 塾代は? 大学の学費は?
その日の夜。
娘を寝かしつけた後、私は暗い寝室でひとりスマートフォンの銀行アプリを開いた。
画面に表示された口座残高を見つめる。
夫婦でフルタイムで働いているのに、毎月の保育園代、都内の高い家賃、日々の生活費で消えていき、貯金は思ったように増えていない。
「このままじゃ、娘がやりたいと言ったことをやらせてあげられないかもしれない」
胸の奥に、重くて冷たい鉛のような不安がのしかかった。
教育費のリアルな重圧に、初めて押しつぶされそうになった夜だった。
「なんとかなる」では済まされない現実
リビングに戻り、ソファでスマホゲームをしている夫に声をかけた。
「ねえ、教育費のことなんだけど。このままで私たち、大丈夫なのかな」
夫は画面から目を離さず、軽い口調で答えた。
「まあ、なんとかなるでしょ。俺らも働いてるし」
その無責任な一言に、私の中の導火線に火がついた。
「なんとかなるって、どうやって!? 具体的にどうするの!? 周りはもう習い事とか始めてるのに!」
声を荒げた私に、夫は驚いたように顔を上げた。
険悪な空気が流れるリビング。
でも、怒りに任せて叫んだ後、私はハッとした。
夫に当たっても、預金残高は1円も増えない。
私が抱えているこの巨大な不安の正体は、「お金がないこと」以上に、「いくら必要で、今どうすべきかが分からない」という見えない未来への恐怖なのだと気づいた。
感情的になるのはやめよう。
必要なのは、漠然とした不安を抱えることではなく、冷静な計算と具体的な行動だ。
ステップ①:見えない不安を「数字」に変える
翌日から、私は徹底的にお金と向き合うことにした。
ネットで情報を集め、大学卒業までに一体いくらくらいかかるのか、我が家の収入から毎月いくらなら貯蓄に回せるのかをノートに書き出した。
固定費を見直し、全く使っていないサブスクリプションを解約し、格安スマホのプランをさらに安いものに変更した。
「いつか必要になるだろう」というモヤモヤした恐怖を、「月にこれだけ貯めればいい」という具体的な目標金額に落とし込んだ。
不思議なことに、現実の数字を直視した方が、心はずっと軽くなった。
見えないお化けに怯えるより、正体が分かっている敵と戦う方が、ずっとマシだったのだ。
ステップ②:強制的に「先取り」で貯める仕組み化
次に手を出したのは、貯金の仕組み作りだった。
これまでは「余った分を貯金しよう」と思っていた。
でも、それでは絶対にお金は貯まらない。日々の忙しさとストレスで、ついコンビニスイーツや週末の外食に使ってしまうからだ。
だから、給料が振り込まれた瞬間に、問答無用で別口座に自動的に移るように設定した。
つみたてNISAなどの投資も、少額から毎月自動で積み立てられるようにした。
最初は「手取りが減った」という感覚に戸惑ったけれど、すぐに慣れた。
「最初からなかったお金」として生活するようになると、無理な節約をしている感覚もなく、気づけば勝手にお金が貯まっていくシステムが完成した。
ステップ③:習い事の「見栄」を捨てる
そして一番の悩みだった、習い事について。
周りの子が英語やリトミックを始めていると聞くと、どうしても焦ってしまう。
でも、私は自分に問いかけた。
「それは本当に娘のため? それとも、親としての私の安心や見栄のため?」
冷静に考えれば、2歳の娘はまだ、英語の歌よりも公園の滑り台に夢中だ。
高い月謝を払って習い事をさせることで、日々の生活がカツカツになり、親がイライラしてしまっては本末転倒だ。
そこで、私たちは高額な習い事を見送った。
代わりに、地域の児童館で開催されている無料の体操教室や、休日に家族で大きな公園に行って自然と触れ合う時間を大切にすることにした。
泥だらけになって笑う娘を見て、私は確信した。
親の愛情や教育の価値は、決して月謝の金額と比例するわけではない。
周りがどうであれ、我が家のペースで、我が家の価値観で選べばいいのだ。
教育費の不安と上手く付き合っていく
あの日、銀行残高を見て絶望した夜から、少し時間が経った。
正直に言って、教育費への不安がゼロになったわけではない。
これからも成長に合わせて、予想外の出費はたくさんあるだろう。
でも、今の私には「なんとかなる」という根拠のない楽観論ではなく、「こうやって備えているから大丈夫」という小さな自信がある。
周りのママ友の行動に焦ることもあるかもしれない。
でも、他人の家庭は他人の家庭。我が家は我が家だ。
お金の不安は、立ち止まって悩んでいても絶対に消えない。
消す方法はただ一つ、現実を直視して、一歩でも行動を起こすこと。
もし、かつての私のように教育費のプレッシャーに夜も眠れないママがいるなら。
まずはノートを一冊買ってきて、今の収入と支出を書き出すことから始めてみてほしい。
見えない不安を、見える数字に変える。
それが、家族の未来を守るための最初の一歩になるはずだから。