昨日、保育園の帰りに2歳の娘が突然泣き出した。
「歩きたくない!」
両手にはスーパーの買い物袋。
肩には重いマザーズバッグ。
雨上がりで、地面は泥だらけ。
私の心は、ポキッと音を立てて折れた。
「もう、無理かも…」
毎日毎日、時間との戦い。
朝6時に起きて、朝食を作り、自分の身支度をして、ぐずる娘を着替えさせる。
満員電車に揺られながら出社し、夕方には息を切らして保育園へ走る。
帰宅してからも、ご飯、お風呂、寝かしつけ。
自分の時間なんて、1秒もない。
そんなギリギリの精神状態で、娘の「歩きたくない」は致命傷だった。
その場でしゃがみ込んで、一緒に泣きたくなった。
でも、泣くことすら許されないのが「母親」という生き物だ。
結局、泥だらけの娘を片手で抱きかかえ、もう片方の手で荷物を引きずるようにして家に帰った。
玄関の鏡に映った自分の顔は、ひどく疲れ切っていて、まるで別人のようだった。
「私、何のためにこんなに頑張ってるんだろう」
そんな真っ暗な気持ちのまま、翌日の昼休み。
ふと立ち寄ったダイソーで、私の日常を劇的に変える「出会い」があった。
実は、育児のストレスって「大きな出来事」よりも「小さな不便の積み重ね」で爆発する。
例えば、子供の靴の泥汚れ。
例えば、食べこぼしのシミ。
例えば、お風呂のおもちゃのヌメリ。
これらが毎日のように、ボディブローのように効いてくる。
「また汚された」
「また掃除しなきゃ」
その小さなイライラが積み重なって、ある日突然キャパオーバーになる。
そんな私の救世主になったのが、ダイソーの普通の日用品だった。
育児の「ちょっと面倒」をなくす魔法
私が買ったのは、特別な育児グッズではない。
どこにでも売っている、普通の日用品。
でも、それが劇的に効いた。
一つ目は「シリコン製の折りたたみコップ」。
外出先でちょっとうがいをさせたい時。
薬を飲ませたい時。
これまではペットボトルのキャップで代用したり、わざわざ重い水筒を持ち歩いたりしていた。
でも、これをバッグに忍ばせておくだけで、そのストレスがゼロになった。
使わない時はペチャンコになるから、かさばらない。
これだけで、荷物が一つ減る。
荷物が減ると、心の余裕が少しだけ増える。
「あ、コップ忘れた」という小さな焦りがなくなるだけで、外出のハードルがグッと下がった。
小さなイライラの元を断つ
二つ目は「お風呂用おもちゃネット」。
これまで、お風呂のフチに無造作に置かれていたアヒルや水鉄砲。
放っておくと、すぐにカビが生える。
そのたびに、自己嫌悪に陥っていた。
「私、こんなこともちゃんとできないんだ」と。
でも、このネットに全部放り込んで吊るすだけ。
水切れが良くて、カビが生えない。
お風呂掃除のたびに感じていた「あの嫌な気持ち」が、綺麗さっぱり消えた。
娘も「お片付けのネットだ!」と喜んで、自分でおもちゃを入れるようになった。
一石二鳥どころか、三鳥くらいある。
そして三つ目。
私が最も救われたのが、本来の用途とは違う「洗顔用の泡立てネット」だ。
固形石鹸を入れて泡立てる、あのネット。
これを、娘の泥だらけの靴を洗うために使ってみた。
これまでは古い歯ブラシでゴシゴシこすっていたけれど、泥が飛び散って洗面台まで汚れるのがストレスだった。
でも、このネットにウタマロ石鹸を入れて軽くこするだけで、驚くほど泡立って汚れが落ちる。
泥も飛び散らない。
力を入れなくても、みるみる白くなる。
週末の夜。
娘が寝静まった後に、ため息をつきながら洗っていた靴洗い。
それが、たった100円のアイテムで「ちょっと楽しい時間」に変わった。
「こんなに簡単なら、もっと早く知りたかった」
心の底からそう思った。
「完璧なママ」を諦める勇気
ダイソーでこれらの商品を見つけた時、私は一つのことに気づいた。
「私は、全部を完璧にやろうとしすぎていた」ということに。
育児も、家事も、仕事も。
全部100点を目指していたから、息苦しかった。
「母親なんだから、これくらいできなきゃ」
「他のママたちは、もっとちゃんとやってるのに」
「SNSのあの人は、毎日手作りのご飯を作ってるのに」
誰に言われたわけでもない。
勝手に自分を追い込んで、自分で自分の首を絞めていた。
でも、100円の便利グッズに頼っていい。
手を抜けるところは、どんどん抜いていい。
そう思えた瞬間、肩の荷がスッと降りた。
私が笑顔でいられること。
それが、娘にとっても一番嬉しいことのはずだから。
育児のストレスは、気合や根性では解決しない。
精神論で乗り切ろうとするから、心が壊れてしまう。
物理的に「手間を減らす仕組み」を作ることが、何よりの特効薬だ。
必要なのは、母親としての覚悟ではなく、便利な「道具」だった。
100円が教えてくれたこと
ダイソーの帰り道。
新しく買った便利グッズをバッグに入れて、私は少しだけ足取りが軽くなった。
「これがあれば、明日の朝は5分長く寝られるかもしれない」
「週末の靴洗いが、5分早く終わるかもしれない」
そんな小さな希望が、私を前を向かせてくれる。
帰宅すると、娘がパタパタと走り寄ってきた。
「ママ、おかえり!」
その笑顔を見て、私も自然と笑顔になれた。
「ただいま。今日ね、ママいいもの買ってきたんだよ」
そう言うと、娘は目を輝かせて「なに?なに?」と聞いてきた。
育児は続く。
終わりの見えないマラソンみたいに。
これからも、きっと「もう無理!」と泣きたくなる夜は来るだろう。
でも、私には強い味方がいる。
100円で買える、小さな心の余裕。
これからは、もっと上手に「頼る」ことを覚えていきたい。
全部自分で背負い込まなくていい。
便利なものには、どんどん甘えよう。
そう自分に言い聞かせながら、私は買ってきたばかりの折りたたみコップをキッチンに置いた。
明日の公園遊びが、少しだけ楽しみになった。
あの泥だらけの靴だって、もう怖くない。
私は、私なりのやり方で、この育児という日々を楽しんでいけばいいのだから。