今回は、何か新しいことを始めようとした際に、挫折せずに習慣化するための心理学的なアプローチとちょっとした工夫についてお伝えします。
資格の勉強やダイエット、早起きなど、目標を立てて新しい習慣を身につけようと決意したものの、数日後には元の生活に戻ってしまったというご経験は、多くの方がお持ちかもしれません。このような挫折は、意志の弱さが原因だと思われがちですが、実は人間の脳が持つ「変化を嫌う」という自然な防衛反応が関わっていると言われています。この心の働きを理解し、無理なく日常に新しい行動を組み込んでいくためのヒントをいくつかご紹介していきます。
挫折してしまう心理的な理由
私たちが新しい習慣を定着させるのが難しいのは、現状を維持しようとする心理的なバイアスが働いているからだと言えそうです。まずは、なぜ長続きしないのか、その背景にある心の動きを少し紐解いてみるのも良いかもしれません。
現状維持バイアスという壁
人間の脳は、エネルギーの消費を抑えるために、慣れ親しんだ状態を好む傾向があります。これを現状維持バイアスと呼びます。新しい行動を起こすことは脳にとって負担となるため、無意識のうちに「やらない理由」を探してしまうことがあります。
- 「今日は疲れているから明日からにしよう」と先延ばしにする
- 「少しだけなら休んでも大丈夫だろう」と自分に言い訳をする
- 完璧にできなかったことで一気にモチベーションが下がる
目標が高すぎるという落とし穴
「毎日1時間ジョギングをする」「毎日必ず本を1冊読む」といった、最初から高すぎる目標を設定してしまうことも、挫折の大きな原因となり得ます。モチベーションが高い初日は達成できても、数日経つと負担に感じてしまい、継続が困難になることが多いようです。
無理なく習慣化するための小さなステップ
挫折を防ぎ、新しい行動を日常の一部にするためには、脳に「これは大きな変化ではない」と思わせることが大切になりそうです。そのための具体的な工夫をいくつかご紹介します。
ハードルを極端に下げる「スモールステップ」
まずは、絶対に失敗しないと思えるレベルまで行動のハードルを下げることをおすすめします。「これなら毎日できる」という小さな一歩から始めることが、習慣化の鍵と言えるかもしれません。
- 読書なら「毎日1ページだけ読む」あるいは「本を開くだけ」にする
- 運動なら「ウェアに着替えるだけ」「1回だけスクワットをする」にする
- 勉強なら「テキストを机に出すだけ」にする
すでに定着している習慣に結びつける「If-Thenプランニング」
新しい行動を単独で始めようとするよりも、すでに毎日行っている習慣に結びつけることで、忘れずに実行しやすくなります。「もしAをしたら、Bをする」というルールをあらかじめ決めておく方法です。
- 朝、コーヒーを淹れるお湯を沸かしている間に(A)、ストレッチを1分間する(B)
- 通勤電車に乗ったら(A)、スマートフォンの学習アプリを開く(B)
- お風呂から上がったら(A)、必ずコップ1杯の水を飲む(B)
モチベーションに頼らずに続けるための工夫
気分ややる気に頼っていると、疲れている日や忙しい日には行動が途絶えてしまうかもしれません。モチベーションに関わらず、自然と行動できる仕組みを作ることが理想的と言えます。
環境を整えて「やらない理由」をなくす
行動を起こすまでの手間をできるだけ省き、すぐに取り掛かれる環境を整えておくことも有効な手段です。準備にかかる時間や労力を減らすことで、行動へのハードルを自然と下げる効果が期待できます。
- 翌朝ジョギングに行くなら、前日の夜にウェアとシューズを玄関に用意しておく
- 読書を習慣にしたいなら、よく座るソファのすぐ横に本を置いておく
- 勉強をするなら、机の上にはテキストとペンだけを出し、スマートフォンは別の部屋に置く
このように、自然と目に入り、すぐに始められる状態を作ることが大切になりそうです。
記録をつけて小さな達成感を味わう
行動を記録することで、「これだけ続けられた」という視覚的な達成感を得ることができます。カレンダーにシールを貼ったり、手帳にチェックを入れたりするだけでも、継続のモチベーション維持に繋がると言えそうです。
- できた日には、お気に入りのペンでカレンダーに丸をつける
- スマートフォンで習慣化専用のアプリを使い、連続記録を伸ばす楽しみを見つける
- 完璧でなくても「少しでもやった」自分を認めてあげる
まとめとして
習慣化のプロセスにおいて最も大切なのは、完璧を目指さずに「途切れてもまた再開する」という柔軟な姿勢を持つことかもしれません。一日や二日できなかったとしても、それは失敗ではなく、単なるお休みと捉えてみるのが良いでしょう。今回ご紹介した心理学的なアプローチや小さな工夫を取り入れていただき、ご自身に合ったペースで新しい習慣を育ててみてはいかがでしょうか。毎日の小さな積み重ねが、やがて大きな変化へと繋がっていくことを願っています。