今回は、小説やゲーム、漫画などの創作活動において、物語の魅力を大きく左右する「世界観作り」と「設定資料」のまとめ方についてお話しします。
魅力的なキャラクターや面白いストーリーがあっても、その舞台となる世界が曖昧だと、読者やプレイヤーは物語に没入しにくくなってしまいます。現実世界とは異なるルールや常識が存在する架空の世界を描く場合、その世界ならではの「リアリティ」を構築することが、作品の説得力を高める鍵となります。
頭の中にある漠然としたイメージを、具体的で矛盾のない世界へと形作っていくためのステップをご紹介します。
世界観の土台となる要素を固める
全く新しい世界をゼロから創造するのは、非常にエネルギーのいる作業です。まずは、その世界を構成する大きな柱となるいくつかの要素から決めていくと、全体像が掴みやすくなります。
世界のルール(法則)を決める
私たちが生きる現実世界に物理法則があるように、架空の世界にもその世界特有のルールを設ける必要があります。
- 魔法や特殊能力の有無:魔法が存在する世界であれば、「誰でも使えるのか」「限られた血筋の者だけが使えるのか」「魔法を使うための代償(体力や特定のアイテムなど)はあるのか」といった制限を明確にします。
- 文明の発展度合い:中世ヨーロッパのような剣と魔法の時代なのか、現代に近いのか、あるいは遠い未来のSF世界なのか。文明のレベルによって、登場人物の移動手段や通信手段、武器の形状などが大きく変わってきます。
- 気候や地形の特殊性:一年中雪に覆われた国、空に浮かぶ島、あるいは海の中に築かれた都市など、特殊な環境はそれだけで物語の強いフックになります。
社会の仕組みを考える
人々が生活している以上、そこには必ず社会的な仕組みが存在します。ここを掘り下げることで、世界の解像度が一気に上がります。
- 政治と権力構造:王様が統治しているのか、民主主義なのか、あるいは特定の宗教団体が権力を握っているのか。誰がルールを作り、誰がそれに従っているのかを考えます。
- 経済と流通:人々は何を仕事にして生活の糧を得ているのでしょうか。また、その世界の主要な通貨や、貴重とされている資源(鉱物や特別な植物など)を設定すると、国同士の争いや登場人物の行動動機を作りやすくなります。
- 身分制度や差別:貴族と平民、あるいは特定の能力を持つ者と持たざる者など、社会的な階層や軋轢が存在する場合、それが物語の大きなテーマになることも少なくありません。
設定資料を整理・管理するコツ
世界観のアイデアが膨らんできたら、それを「設定資料」として文字や図に書き起こし、整理しておくことが重要です。執筆中に設定の矛盾が生じるのを防ぎ、創作をスムーズに進めるための管理方法をご紹介します。
カテゴリごとに分けて記録する
思いついた順にノートに書き殴っていくと、後から必要な情報を探すのに苦労してしまいます。設定資料は、あらかじめカテゴリを決めて分類しながら記録していくのがおすすめです。
例えば、「地理・気候」「歴史・年表」「政治・経済」「魔法・技術システム」「種族・生物」「組織・勢力」といった項目に分け、デジタルツール(EvernoteやNotionなどのメモアプリ)を使って管理すると、検索性が高く便利です。
すべてを読者に説明しようとしない
設定資料を作り込んでいると、考えたアイデアのすべてを作品の中に盛り込みたくなってしまうものです。しかし、物語の序盤から世界観の説明(いわゆる説明台詞)ばかりが続くと、読者は退屈してしまいます。
「氷山の一角」を意識することが大切です。作者の中には海面下に隠れた巨大な設定が存在しているけれど、作品の中に直接描写するのは、水面に出ているほんの一部の必要な情報だけに留めます。背後に緻密な設定が存在していることは、言葉で説明しなくても、登場人物の自然な行動や何気ない描写の端々から読者に伝わり、世界の奥行きを感じさせるスパイスになります。
世界観作りは、自分が神様になって新しい宇宙を創造するような、創作活動の中でも特にワクワクする工程です。細部までこだわった魅力的な世界を構築し、そこを舞台に登場人物たちが生き生きと動き回る物語を紡ぎ出してみてはいかがでしょうか。