今回は、多くの方が関心を持つ「健康食品」について、その選び方や効果的な活用法を解説します。
健康意識の高まりと共に市場規模が拡大している健康食品ですが、正しい知識を持って選ばなければ期待した効果が得られないばかりか、場合によっては健康被害を引き起こすリスクもあります。
この記事では、健康食品の種類や効果、安全性の確認方法など、賢く活用するためのポイントをお伝えします。
健康食品とは?基本的な知識を整理する
「健康食品」という言葉は、法律上の明確な定義はなく、一般的には「健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般」を指します。錠剤やカプセル状のサプリメントから、飲料や食品形態のものまで様々な形態がありますが、いずれも「食品」に位置づけられています。
健康食品は大きく分けると「保健機能食品」と「それ以外の一般食品」に分類されます。保健機能食品には国が定めた安全性と効果に関する基準に従って機能性が表示できる以下の3種類があります。
- 特定保健用食品(トクホ):消費者庁長官の個別審査・許可を受けた食品で、特定の保健の用途に資する旨を表示できるもの
- 栄養機能食品:一日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が国の規格基準を満たす食品で、その栄養成分の機能を表示できるもの
- 機能性表示食品:事業者の責任で、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品で、販売前に安全性および機能性の根拠に関する情報を消費者庁長官に届け出たもの
一方、これら以外の「いわゆる健康食品」(サプリメント、栄養補助食品、健康補助食品など)は一般食品に分類され、機能性の表示はできません。しかし、多種多様な素材(原材料)を用いた商品が、機能性を連想させる形で販売されています。
2025年に注目される健康食品のトレンド
2025年に向けて、健康食品市場ではいくつかの注目すべきトレンドが見られます。消費者の健康志向がさらに高まる中、単に不足している栄養素を補うだけでなく、より総合的な健康管理をサポートする製品が求められています。
- 栄養コーディネーション:ひとつの栄養素だけでなく、個人に必要な栄養素を総合的に考えたアプローチが注目されています。2025年の「日本人の食事摂取基準」の改定などにより、個々の状態に合わせた栄養摂取の重要性が高まっています。
- 老化抑制サイエンス:健康寿命を延ばすことに焦点を当てた製品開発が進んでいます。老化のスピードを緩やかにする技術やビジネスが新たな市場を形成しつつあります。
- 腸内環境の改善:腸内フローラや腸管ホルモンへの関心が世界的に高まり、腸活人気に拍車がかかっています。免疫力や全身の健康との関連が注目されています。
- パーソナライズされた栄養アプローチ:AIや遺伝子検査を活用し、個々の体質や健康状態に最適な食事プランを提供するサービスが増えています。
- ゆるやかな食事制限サポート:無理なく続けられる「ゆる食事制限」をサポートする製品が人気です。例えば、断食の効果を食べながら得られるような製品が注目されています。
これらのトレンドに共通するのは、「健康×おいしさ」の両立と「コミュニケーション」の要素です。健康食品を「辛い、大変なもの」ではなく、生活を豊かにするポジティブな要素として捉える傾向が強まっています。
健康食品選びで注意すべきポイント
健康食品を選ぶ際には、以下のポイントに注意することが重要です。
- 表示を確認する:保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)かどうかを確認しましょう。これらは国の制度に基づいて安全性や機能性に関する一定の基準を満たしています。
- 摂取目安量や注意事項を守る:パッケージに記載されている摂取目安量や注意事項は必ず守りましょう。「多く摂れば効果が高まる」という考えは危険です。
- 食品形状を意識する:錠剤・カプセル状の製品は過剰摂取になりがちです。味・香り・容積が備わった通常の食品形状の製品の方が、過剰摂取になりにくいという特徴があります。
- 「天然」「自然」という表現に惑わされない:「天然」「自然」「ナチュラル」などのうたい文句は「安全」を連想させますが、科学的には「安全」を意味するものではありません。天然由来の成分でも健康被害を引き起こす可能性があります。
- 体験談や口コミだけで判断しない:個人の体験談や口コミは参考程度にとどめ、科学的な根拠に基づいた情報を重視しましょう。
健康食品の効果的な活用法
健康食品を効果的に活用するためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 健康の基本は食事・運動・休養:健康食品はあくまで補助的なものであり、健康の維持・増進の基本は「栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な休養」です。不摂生を健康食品でカバーしようという考え方は避けましょう。
- 自分に必要な栄養素を知る:自分の食生活や生活習慣、健康状態を把握し、本当に補う必要がある栄養素は何かを考えましょう。不必要なものを摂り続けることは、経済的負担だけでなく健康リスクにもなり得ます。
- 記録をつける:健康食品の利用状況(何を、いつ、どのくらい摂ったか)と体調の変化を記録することで、自分の体に合っているかどうかを判断する材料になります。
- 医師・薬剤師に相談する:特に持病がある場合や薬を服用している場合は、医師や薬剤師に健康食品の利用について相談しましょう。薬との相互作用で思わぬ健康被害が生じる可能性があります。
- 体調不良時は摂取中止:健康食品を摂っていて体調が悪くなったときには、まずは摂取を中止し、症状が続く場合は医療機関を受診しましょう。
健康食品による健康被害のリスク
健康食品は「食品」であるため安全と思われがちですが、適切に使用しないと健康被害を引き起こすリスクがあります。特に注意が必要なのは以下のようなケースです。
- 医薬品との相互作用:健康食品の中には、医薬品の効果を強めたり弱めたりするものがあります。特に処方薬を服用している場合は注意が必要です。
- アレルギー反応:天然成分由来の健康食品でもアレルギー症状を引き起こす可能性があります。初めて摂取する成分の場合は少量から始めるなどの注意が必要です。
- 過剰摂取によるリスク:通常の食品では摂り過ぎることが少ない成分でも、サプリメント形態だと容易に過剰摂取してしまう可能性があります。特に脂溶性ビタミン(A、D、E、K)などは過剰摂取に注意が必要です。
- 特定の対象者のリスク:病人、子ども、妊産婦、高齢者、アレルギー体質のある方は、健康食品の使用に特に注意が必要です。
健康食品で健康被害が起きた場合は、医療機関への受診と共に、(独)国民生活センターや最寄りの保健所等に相談することが望ましいでしょう。
まとめ:健康食品との上手な付き合い方
健康食品は、正しく選び適切に活用すれば、健康維持や増進のサポートになり得ます。しかし、過大な期待や誤った使い方は、逆に健康リスクにつながる可能性があることを忘れてはいけません。
2025年以降、健康食品市場はさらに多様化・個別化が進むと予想されます。そのような中で、消費者一人ひとりが「自分にとって本当に必要なものは何か」を見極める目を持つことが重要です。健康食品を利用する際には、安易な情報に惑わされず、科学的根拠に基づく選択を心がけましょう。
健康の基本は、バランスの良い食事、適度な運動、十分な休養にあります。健康食品はあくまでそれらを補完するものであり、不摂生の「免罪符」にはなりません。自分の生活習慣を見直し、必要に応じて健康食品を取り入れる、という基本に沿って、より良い健康生活を送りましょう。