Appleが先週、初のOLEDディスプレイと最新のM4チップを搭載した新型「iPad Pro」をはじめとする複数のiPadモデルに対して、自己修理サービス「Self Service Repair」を拡大すると発表しました。この動きは、消費者やサードパーティの修理業者に大きな利点をもたらすとともに、製品の長寿命化にも貢献するものとなります。
対象となるiPadモデルと修理可能な部品
今回の自己修理サービス拡大の対象となるのは、最新のiPad Pro(M4)をはじめ、iPad Air(M2以降)、iPad mini(A17 Pro)、iPad(A16)です。2025年5月29日より、これらの対象モデルについて、ディスプレイ、バッテリー、カメラ、外部充電ポートなどの主要コンポーネントの修理キットと部品の注文が可能になりました。
Appleは修理マニュアル、純正部品、診断ツール、修理用ツールおよびレンタルツールキットへのアクセスを提供することで、ユーザー自身が修理を行える環境を整えています。これにより、修理のための店舗訪問や製品の発送を待つ必要がなくなります。
iPad Pro M4の革新的技術と自己修理の意義
2024年5月に発売されたiPad Pro M4は、Appleの最新フラッグシップタブレットで、いくつかの革新的技術を搭載しています。特に注目すべきは、Ultra Retina XDRと呼ばれる最先端のタンデムOLEDディスプレイ技術と、強力なAI処理能力を持つM4チップの採用です。さらに、11インチモデルで約5.3mm、13インチモデルで約5.1mmという驚異的な薄さを実現し、Appleの歴代製品の中で最も薄いデバイスとなっています。
こうした高度な技術を搭載した製品に対する自己修理サービスの提供は、製品の長寿命化という観点からも重要な意味を持ちます。AppleCare担当副社長のブライアン・ナウマン氏は「Appleの目標は、可能な限り長く使える世界最高の製品を作ることです」と述べており、自己修理サービスの拡大は製品のライフサイクル延長を支援する取り組みの一環と位置づけています。
正規部品流通プログラムの拡充
Appleはまた、「Genuine Parts Distributor」プログラムの詳細についても発表しました。このプログラムは、Appleと直接的なサービス関係を持たない修理業者が、サードパーティディストリビューターを介してApple純正サービス部品を注文できるようにするものです。
米国ではMobileSentrix、欧州ではMobileSentrixとMobileparts.shopが認定ディストリビューターとして機能しており、iPhone修理用のディスプレイ、バッテリー、充電ポートなどの幅広い純正部品が提供されています。そして5月29日からはiPad部品も利用可能になりました。これにより、専門的な修理業者のネットワークが拡大し、より多くの消費者が純正部品による質の高い修理サービスを受けられるようになります。
拡大するAppleの修理サービスエコシステム
Appleの自己修理サービスは2022年に開始され、現在では最近発売されたiPhone 16e、MacBook Air、Mac Studioを含む65のApple製品をサポートしています。また、カナダが今夏に34か国目のサービス提供国となる予定で、サービス地域も着実に拡大しています。
Appleの修理サービスエコシステムには、Apple Store、Apple正規サービスプロバイダ、独立系修理プロバイダ、郵送修理センター、自己修理サービス、正規部品流通プログラムなど、複数の選択肢が含まれており、ユーザーのニーズに応じた修理方法を選択できます。
日本市場への影響と今後の展望
現時点では、日本でのSelf Service Repairの提供開始時期は明らかにされていませんが、Appleのグローバル展開パターンを考慮すると、近い将来に日本を含むアジア地域にもサービスが拡大する可能性が高いと考えられます。
日本国内でも「修理する権利」の考え方が浸透しつつあり、メーカーによる修理サービスの拡充は消費者から歓迎される傾向にあります。iPad Pro M4のような高性能デバイスの修理可能性が高まることは、日本の消費者にとっても大きなメリットとなるでしょう。
また、環境への配慮という観点からも、製品の長寿命化に貢献する自己修理サービスの意義は大きく、Appleが掲げる2030年までのカーボンニュートラル達成目標にも沿った取り組みといえます。
まとめ
Appleによる最新のiPad ProなどへのSelf Service Repair拡大は、ハイエンドデバイスの修理可能性を高め、製品寿命の延長に貢献する重要な一歩です。自己修理だけでなく、サードパーティ修理業者のエコシステム強化も含むこの包括的なアプローチは、消費者に多様な修理オプションを提供するとともに、環境負荷の低減にも寄与します。
日本でのサービス開始が待たれるところですが、最新技術を詰め込んだApple製品がより長く使えるようになる取り組みとして、今後の展開が注目されます。