子どもが生まれてから、昔の友人と会うことが少しずつしんどくなった。嫌いになったわけじゃない。むしろ大事だからこそ、会ったあとにどっと疲れてしまう自分が情けなくて、予定の前日から落ち着かなくなることが増えた。私は36歳で、都内で時短勤務をしながら5歳の息子を育てている。独身時代から仲のいい友人たちとは今でもつながっているけれど、会話のテンポも、お金の使い方も、休日の使い方も、少しずつズレていった。
いちばんきつかったのは、悪気のない一言が胸に残った日だった。久しぶりのランチで、友人が「最近ほんと自由な時間なくてかわいそうだね。でも子どもがいるって幸せでしょ」と明るく言った。その場では笑ってうなずいた。でも本当は、その週ずっと寝不足で、保育園の呼び出しも重なって、仕事でも謝ってばかりだった。幸せかどうかを聞かれたわけではないのに、勝手に試されている気がしてしまって、帰りの電車で急に泣きそうになった。
会うのがしんどくなったのは、相手のせいだけではなかった
あとから落ち着いて考えたら、友人が悪いというより、私の中に余裕がなかった。家では子どもの機嫌に合わせて動き、職場では短い時間で結果を出そうとして、外でまで無理に感じのいい自分を作っていた。会う前から、遅刻しないように段取りして、子どもの預け先を確認して、帰宅後の夕飯まで考えていたから、ランチが始まる前にすでにエネルギーを使い切っていた。
しかも私は、会っているあいだずっと比べていた。きれいな服を着ていること、ゆっくりコーヒーを飲めること、夜に映画を見られること。相手は相手で仕事や将来の悩みを抱えているのに、私は勝手に「自由がある人」と決めつけて、少しひがんでいた。だから、何気ない話題にも過剰に反応してしまっていたんだと思う。
無理に今まで通りでいようとするのをやめた
そのあと、私は付き合い方を少し変えた。まず、会う頻度を減らした。以前は誘われたらなるべく断らないようにしていたけれど、今は月に一回も会えなくて普通だと思うようにした。その代わり、会うときは見栄を張らずに「夕方までなら行ける」「子どもの体調次第で変更させて」と先に伝えるようにした。これを言うまでは勇気がいったけれど、言ってみると意外とあっさり受け止めてもらえた。
本音を少しだけ出したら、空気が変わった
ある日、気心の知れた友人に「最近、人に会う体力が減ってて、楽しみなのに疲れちゃうんだよね」とこぼした。すると友人は、「わかるよ。私は逆にひとりの時間が長すぎて、誰かと会う前に緊張する」と返してくれた。その瞬間、勝手に感じていた壁が少し崩れた。しんどさの理由は違っても、みんな何かしら無理をして生きているんだとわかったからだ。
私は、友人関係がしんどくなったとき、距離を取ることは裏切りだと思っていた。でも実際は逆だった。無理して会って余裕のない顔をするより、会える形に整えてから会ったほうが、ちゃんと相手を大事にできる。返信が遅い時期があってもいいし、会う場所を家の近くにしてもいいし、短時間で切り上げてもいい。昔と同じ形に戻さなくても、関係は続けられる。
実際、最近は会い方をかなり変えた。夜の飲み会はほぼ行かず、昼の短いお茶だけにすることもある。子ども連れで会える相手とは公園の近くで、そうでない相手とは駅ビルで一時間だけ。以前の私なら、そんな会い方は失礼だと思っていた。でも本当に失礼だったのは、無理して予定を入れて、当日に気持ちがすり減ったまま会うことだったのかもしれない。背伸びをやめたら、また次に会おうと思える回数が増えた。
いまでも、友人からの誘いに即答できない日はある。それでも以前みたいに、自分を冷たい人間だと責めなくなった。ママになってから会うのがしんどいと感じるのは、性格が悪くなったからじゃない。抱えるものが増えて、心の容量が先にいっぱいになる日があるだけだ。そう思えるようになってから、友人とのやり取りに少し呼吸が戻った。大事なのは、無理して笑うことではなく、続けられる距離を見つけることだった。