時短勤務で昇進試験に落ちた日。「キャリアを諦めるしかない」という悔しさを原動力に変えるまで

「あー、やっぱりダメだったか……」

パソコンの画面に表示された、社内の昇進試験の結果通知メール。
そこには「今回は見送りとさせていただきます」という冷たい文字が並んでいた。

35歳の私は、IT企業で企画職として働いている。
夫は同じ会社の別部署で働き、私たちには4歳の娘がいる。
娘が1歳の時に時短勤務で復職し、今は毎日16時半には退社して、保育園のお迎えに走る日々だ。

今回の昇進試験は、私にとって大きな挑戦だった。
娘の夜泣きが落ち着き、ようやく少しだけ仕事に本腰を入れられるようになったこのタイミングで、
「もう一度、キャリアアップを目指したい」と強く思ったのだ。

試験のための課題レポートは、娘が寝静まった後の深夜や、休日の早朝に、
睡眠時間を削って必死に書き上げた。
面接対策も、夫に娘を任せてカフェにこもり、何度も何度も練習した。

「今回はいけるかもしれない」

そんな手応えがあったからこそ、不合格の文字を見た瞬間、
目の前が真っ暗になり、悔しさと情けなさで涙が溢れそうになった。

「大丈夫? どうしたの?」

隣の席の後輩が心配そうに声をかけてきたけれど、
「ううん、何でもない。ちょっと目にゴミが入っちゃって」と誤魔化すのが精一杯だった。

「時短」という見えない壁と、夫の無意識の言葉

その日の夜。
娘を寝かしつけた後、私はリビングで一人、缶チューハイを開けた。
悔しくて、悲しくて、どうしても一人で飲み込みきれなかった。

遅く帰宅した夫に、私は試験に落ちたことを打ち明けた。

「そっか……残念だったね」
夫は同情するような顔をしてくれたけれど、その後に続いた言葉が、私の心に深く突き刺さった。

「まあでも、今は時短勤務だし、仕方ないよ。娘がもっと大きくなってから、また挑戦すればいいじゃない」

悪気のない、慰めの言葉だったのだと思う。
でも、私にはそれが「時短勤務のお前には無理だったんだよ」という宣告に聞こえた。

「『今は仕方ない』って何? 時短だからダメなの?
私、フルタイムの人と同じくらい、いや、それ以上に短い時間で成果を出そうと必死に頑張ってきたのに。
どうして『時間』だけで評価されなきゃいけないの?」

自分でも驚くほど、感情的な声が出てしまった。
夫は困惑したように私を見た。

「いや、そういう意味じゃなくて……ただ、今は無理しなくてもいいんじゃないかって」
「私が無理してるって言うの? 私がキャリアを諦めなきゃいけないの?」

涙がポロポロとこぼれ落ちた。
私だって、本当はもっと遅くまで残業して、プロジェクトの最後まで見届けたい。
もっと出張に行って、新しい経験を積みたい。

でも、できないのだ。
16時半にはパソコンを閉じなければ、保育園のお迎えに間に合わない。
子供が熱を出せば、どんなに重要な会議があっても休まなければならない。
「時間」という見えない壁が、いつも私の前に立ちはだかり、私の挑戦を阻む。

「なんで私だけが、こんなに制限を受けなきゃいけないの。
なんで私だけが、諦めなきゃいけないの……」

夫は何も言わず、ただ黙って私の話を聞いていた。
その沈黙が、さらに私の孤独感を深めていった。

悔しさを原動力に変える「私だけのキャリア」

翌日、私は腫れた目で出社した。
悔しさはまだ消えていなかったけれど、このまま落ち込んでいても何も変わらない。

私は、もう一度自分の働き方を見つめ直すことにした。

確かに、私は「時間」ではフルタイムの社員に敵わない。
でも、限られた時間の中で、いかに効率よく成果を出すかという「生産性」においては、
誰にも負けない自信があった。

「時間で評価されないなら、圧倒的な『質』で勝負するしかない」

私は、これまでの仕事のやり方を徹底的に見直した。
無駄な会議は減らし、本当に必要な業務だけに集中する。
自分の得意分野である「データ分析」のスキルをさらに磨き、チーム内で「この分野なら彼女に聞けば間違いない」と言われるポジションを確立することを目指した。

そして、上司にも率直に自分の思いを伝えた。

「今回の昇進は見送りになりましたが、私はまだキャリアを諦めていません。
時短勤務という制限はありますが、時間あたりの生産性で、必ずチームに貢献します。
だから、もっと責任のある仕事を任せてください」

上司は少し驚いたような顔をした後、力強く頷いてくれた。

「わかった。君のその熱意、期待しているよ」

諦めないことで見えた、新しい道

それから1年。
私は、限られた時間の中で必死に働き続けた。
データ分析のスキルを活かして、チームの業務効率化に大きく貢献し、
「時短勤務でも、これだけの成果が出せる」ということを、行動で示し続けた。

そして迎えた、次の昇進試験。

結果は、見事「合格」だった。

通知メールを見た瞬間、1年前とは違う、嬉し涙が溢れた。
「時間」という壁を言い訳にせず、自分の強みを信じて努力し続けたことが、
ようやく認められたのだ。

その日の夜、私は夫に合格の報告をした。
夫は「おめでとう! 本当によく頑張ったね」と、自分のことのように喜んでくれた。

「あの時、『時短だから仕方ない』って言ってごめん。君は本当にすごいよ」

夫の言葉に、私は照れくさく笑った。

「ううん。あの言葉があったから、私、絶対に見返してやるって思えたんだよ。
悔しさが、一番の原動力になったから」

ワーキングマザーにとって、「キャリア」と「育児」の両立は、決して簡単なことではない。
時間に制限があることで、悔しい思いをすることも、諦めそうになることも、何度もあるだろう。

でも、そこで「仕方ない」と立ち止まってしまったら、何も変わらない。
悔しさをバネにして、自分にしかできない「価値」を見つけ出し、行動し続けること。
それが、見えない壁を乗り越え、自分らしいキャリアを切り拓くための、一番の近道になるのだと、私は信じている。

→[PR]関連商品を見る

タイトルとURLをコピーしました