DIYで失敗して部屋が狭くなった後悔から私が学んだプロに任せる勇気

「……なんか、思ってたのと違う」

休日の夕方。
ホームセンターで買い込んできた木材と塗料の匂いが充満するリビングで、私は完成したばかりの「手作り絵本棚」を見上げて、静かに絶望していた。

私は34歳。3歳の息子と夫の3人暮らし。
もともと物を作るのは好きだったし、SNSで「100均グッズで簡単DIY!」や「ホームセンターの木材でおしゃれな家具作り!」という投稿を見るたびに、自分にもできるような気がしていたのだ。

「市販の絵本棚って高いし、サイズも微妙に合わない。自分で作れば、安くて部屋にピッタリのものができる!」

そう意気込んで、週末に夫を巻き込み、一大プロジェクトをスタートさせたのだった。

理想と現実のギャップ

SNSで見た設計図を見よう見まねで書き、ホームセンターで木材をカットしてもらった。
ここまでは順調だった。

でも、いざ自宅のリビングで組み立てようとすると、素人の甘さが露呈した。

ネジをまっすぐ打てず、木材が微妙にズレる。
「パパ、もっとしっかり押さえててよ!」と私が怒鳴れば、
「俺だって押さえてるよ!ネジ打つのが下手なんだろ!」と夫が言い返す。
その横で、息子は「僕もトンカチやりたい!」と泣き叫ぶ。

部屋中には木屑が飛び散り、ペンキの甘い匂いで頭が痛くなってきた。

そして数時間の格闘の末、出来上がったのは、SNSで見た「おしゃれな北欧風絵本棚」とは似ても似つかない代物だった。

どこか全体的に歪んでいて、手で押すとグラグラと揺れる。
塗ったペンキはムラだらけで、所々木目が透けて見えている。
何より、思ったよりも「デカい」。

部屋の隅に置いてみると、その異様な存在感で、ただでさえ狭いリビングがさらに狭く、圧迫感を感じるようになってしまった。

「これ……危ないから息子が触ったら倒れるかもね」
夫が冷や汗をかきながら呟いた。
私も、無言で頷くしかなかった。

「手作り」という呪縛

失敗した。明らかに失敗だった。

でも、「せっかく作ったんだから」「材料費に1万円もかけたんだから」という執着が、私にその絵本棚を捨てることを許さなかった。

結局、グラグラする絵本棚を壁にぴったりとくっつけ、倒れないように中に重い図鑑ばかりを詰め込んだ。
息子のお気に入りの薄い絵本は、隙間に適当に差し込むだけ。

「絵本を綺麗に収納したい」と思って作ったはずなのに、結果的に以前よりも雑然としてしまった。

それから数ヶ月。
リビングで過ごすたびに、その巨大で不格好な絵本棚が目に入る。

友達が遊びに来た時、「あ、これ手作りなんだね。すごいね」と気を使って言ってくれたけれど、その声のトーンに「ちょっと不格好だね」という本音が透けて聞こえた気がして、ひどく落ち込んだ。

「なんで私、あんなもの作っちゃったんだろう」

SNSで見た素敵なDIY部屋は、もともと広い部屋に住んでいるか、本当にDIYの技術がある人だから成立するものだったのだ。
素人が狭いマンションで真似をして、うまくいくはずがなかった。

失敗から学んだ「プロに任せる」という選択

ある日、息子が絵本を取ろうとして、棚の角で頭をぶつけそうになった。

「危ない!」
慌てて私が抱き止めた時、私の中で何かが吹っ切れた。

「もう、こんな危険で邪魔なもの、捨てよう」

その週末、私は夫にお願いして、あの絵本棚を粗大ゴミに出した。
苦労して作ったものを捨てるのは心が痛んだし、材料費の1万円が無駄になったことも悔しかった。

でも、粗大ゴミ回収のトラックが絵本棚を乗せて去っていった後、リビングに戻った私は、思わず深呼吸をした。

「……部屋が、広い」

巨大な塊がなくなったリビングは、驚くほどスッキリとして、風通しが良くなったように感じた。

その後、私はネットで、プロが作った市販のシンプルな絵本棚を購入した。
値段は1万5千円。
私がDIYにかけた材料費と、ほぼ同じくらいだった。

届いた絵本棚は、当たり前だけれど、どこも歪んでいないし、グラグラもしない。
子供が触っても安全なように角が丸く加工されていて、見た目もスッキリとおしゃれだ。

「最初から、これを買えばよかったんだ」

DIYは素晴らしい趣味だと思う。
でも、それは「作る過程そのもの」を楽しめる人のためのものだ。
「安く済ませたい」「市販品より良いものを作りたい」という下心だけで手を出すと、私のように痛い目を見る。

素人の手作りは、時として「安物買いの銭失い」になる。
そして、失敗した大型家具ほど、処分に困り、部屋のスペースと心の余裕を奪うものはない。

もし今、SNSを見て「私もDIYで家具を作ってみようかな」と意気込んでいる人がいるなら。

まずは、本当に自分にその技術と根気があるのか、冷静に考えてみてほしい。
プロが作った家具には、それだけの「安全性」と「美しさ」という価値がある。
お金で買える安心と快適さは、素直にプロに任せる。
それが、失敗から学んだ私の「一番賢い選択」だ。

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