老後資金の不安と貯金できない焦りから私が抜け出した「見える化」の方法

「老後資金、2000万円問題」

テレビから流れてきたその言葉に、私は思わず持っていた箸を止めた。
隣で唐揚げを頬張る夫は「そんなの無理に決まってるじゃん」と軽く笑い飛ばし、5歳の息子は「お腹いっぱいー!」とお茶をこぼして騒いでいる。

平和な夕食の風景。
でも、私の心の中には、冷たい水がポタポタと落ちるような「不安」が広がっていた。

私は35歳。夫と共働きで、世帯年収はごく平均的だ。
毎月カツカツというわけではないけれど、住宅ローンの返済、保育園代、そしてこれからどんどん増えていくであろう息子の教育費を考えると、手元に残るお金はすずめの涙。

「貯金、全然できてないな……」

夜、子供が寝た後にこっそり開いた通帳の残高は、ここ数年ほとんど変わっていなかった。

「今のままで、私たちは老後を生きていけるの?」

その不安は、日に日に大きくなっていった。

焦りが生んだ「間違った行動」

老後への焦りから、私は「とにかくなんでもやらなきゃ」と手当たり次第に行動し始めた。

まずは、SNSで話題になっていた高配当株投資。
「毎月配当金がもらえる!」という言葉に飛びつき、なけなしの貯金を崩してよく分からない企業の株を買った。
結果、数ヶ月後に株価が暴落し、大きな含み損を抱えて青ざめることになった。

次に手を出したのは、過度な節約。
食費を極限まで削り、特売のチラシを血眼になって追いかけ、家族での外食も「お金がもったいないから」とすべて断った。
でも、そんな生活が長く続くはずもなく、ストレスで爆発してはネットショッピングで散財を繰り返す始末。

「貯金しなきゃ」という強迫観念が、私の心をどんどん貧しくさせていた。

ある日、夫に言われた。
「最近、いつもお金のことばっかり気にしてて、ピリピリしてるよ。もっと今を楽しもうよ」

その言葉に、私はハッとした。

将来の不安に押しつぶされて、今、目の前にいる家族との「幸せな時間」まで犠牲にしている自分に気づいたのだ。

「見えない不安」を「見える化」する

私は、投資信託の口座をそっと閉じ、節約のためのチラシアプリも削除した。
そして、代わりにノートとペンを取り出した。

「私が不安なのは、『いくら必要なのか』『今いくらあるのか』が分からないからだ」

漠然とした「老後資金2000万円」という言葉に踊らされていたけれど、我が家にとって本当に2000万円必要なのか?
そもそも、退職金はいくら出るのか?
年金はいくらもらえるのか?

私は、休日の午後を使って、夫と一緒に現状を徹底的に「見える化」する作業を始めた。

・現在の貯金額
・毎月の固定費(住宅ローン、保険料、通信費など)
・想定される退職金
・ねんきん定期便で確認した将来の年金受給額予想

これらを紙に書き出してみると、見えてきた現実があった。

「あ、今のペースでいけば、65歳までにこれくらいは貯まりそう」
「でも、子供が大学に行く時期は、やっぱり赤字になるね」

具体的な数字が出たことで、「漠然とした不安」は「対処すべき課題」へと変わった。

「今」を楽しむためのお金のルール

私たちは、老後資金のために、無理のない範囲でつみたてNISAを始めることにした。
毎月、家計に負担のかからない少額を、機械的に積み立てていく。
「増えたらラッキー」くらいのお守り代わりだ。

そして、それ以外の余ったお金は、「家族の今を楽しむため」に使うと決めた。

週末には、月に一度のちょっと良い外食。
年に一度は、家族旅行。

「老後のため」とすべてを我慢して、思い出のないカサカサの人生を送るより、「今」を笑顔で過ごすことの方が、ずっと価値があると思えたからだ。

通帳の残高は、相変わらず劇的には増えていない。
でも、あの頃のような「見えない未来への恐怖」に怯えることはなくなった。

老後資金は、確かに大切だ。
でも、そのために「今」の幸せを犠牲にしては本末転倒だ。

もし今、「貯金できない」と将来に焦りを感じている人がいるなら。

まずは、焦って投資や節約に走る前に、ノートとペンを持って「自分の現状」を書き出してみてほしい。
見えない不安を「見える化」するだけで、心は驚くほど軽くなる。

そして、「老後」と同じくらい、あなたの「今」を大切にするためのルールを作ってみてほしい。
その心の余裕が、結果的に「豊かな未来」につながっていくのだから。

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