今回は、私が「食べ物」との新しい向き合い方を通じて見つけた心の満足感についてお話しします。
単に空腹を満たすものから、心身のバランスを整える大切なパートナーへと変わった食との関係性。
この変化が私の日常にもたらした小さいけれども確かな変化を紹介します。
食べることが好きだった私
私は30代前半の女性で、子どもの頃から食べることが大好きでした。特に好き嫌いもなく、どんな料理も「おいしい！」と言って食べる子どもだったと母からよく聞かされていました。大学生になり一人暮らしを始めてからは、自分で料理をすることにも興味を持ち始めました。
しかし、社会人になってからは忙しさを言い訳に、コンビニ食や外食が増え、「とりあえずお腹を満たす」ための食事が習慣になっていました。栄養バランスよりも手軽さや時間の節約を優先していたのです。夜遅くに帰宅して、電子レンジでチンするだけの食事。気づけば、食べることが単なる日課になり、かつての「食べる喜び」は薄れていました。
また、仕事のストレスから無意識に甘いものや脂っこいものに手が伸び、気分転換のために食べるという習慣も身についていました。「今日は頑張ったから」と自分へのご褒美としてスイーツを食べることも増えていました。
気づいた心と体の不調
そんな生活を2年ほど続けていたある日、なんとなく体がだるく、疲れがとれないことに気づきました。朝起きるのがつらく、日中も集中力が続かない。肌の調子も悪くなり、何となく気分も沈みがちになっていました。
「年齢のせいかな」と思っていましたが、ある時、友人との会話で「食べ物と心の健康って関係あるらしいよ」という話を聞き、はっとしました。私の場合、不規則な食事、栄養バランスの偏り、そして食べることに対する無意識な向き合い方が、心と体の調子に影響しているのではないかと考えるようになりました。
実際、私の食生活を振り返ってみると、以下のような問題点がありました：
- 朝食を抜くことが多く、空腹状態で仕事を始めていた
- 昼食は早食いで、ほとんど噛まずに食べていた
- 夕食が遅く、しかも量が多かった
- ストレスを感じると甘いものや脂っこいものに手が伸びていた
- 食事中もスマホを見たり、テレビを見たりと「ながら食い」をしていた
これらの習慣が、私の心と体のバランスを崩していたのかもしれないと思いました。
食と向き合う旅の始まり
そこで私は、食べ物との関係を見直すことにしました。インターネットで調べたり、食と心の健康に関する本を読んで、少しずつ知識を増やしていきました。そして、無理なく続けられそうないくつかの小さな変化から始めることにしました。
まず最初に取り組んだのは、「意識して食べる」ということです。食事の時間はスマホやテレビを消し、食べることだけに集中するようにしました。初めは退屈に感じましたが、次第に食材の味や食感、香りをより感じるようになりました。
次に、朝食をきちんと食べる習慣をつけました。時間がない日でもバナナとヨーグルトだけでも食べるようにしました。朝食を食べ始めてから、午前中の集中力が上がったように感じます。
また、週末には時間をかけて自炊をする日を作りました。スーパーで季節の野菜を選び、じっくりと調理する時間を楽しむようになりました。最初は面倒に感じることもありましたが、徐々に料理の過程そのものが楽しくなってきました。
そして、食材選びにもこだわるようになりました。必ずしもオーガニックや高級な食材ではなく、なるべく新鮮な食材、そして自分の体調に合わせた食材を選ぶようになりました。例えば、疲れているときは消化に良いものを、元気が欲しいときは栄養価の高いものを意識して選ぶといった具合です。
変化と気づき
こうした小さな変化を続けて約3ヶ月が経ったころ、いくつかの変化に気づきました。
まず、体調面では朝起きたときの目覚めが良くなりました。以前のようなだるさが減り、朝から活動的になれるようになったのです。肌の調子も良くなり、友人からも「最近、肌きれいだね」と言われることが増えました。
しかし、私にとってもっと大きな変化は心の面でした。食べることが「単なる義務」から「楽しみの一つ」へと変わったのです。食事の時間が、一日の中で自分と向き合う大切な時間になりました。
特に印象的だったのは、ある日の夕食時のことです。その日は仕事で大きなプレゼンテーションがあり、緊張と疲れでヘトヘトになっていました。帰宅後、いつもならコンビニ弁当で済ませていたところを、冷蔵庫にあった野菜で簡単なスープを作りました。
その温かいスープを一口飲んだとき、なぜか涙が出てきたのです。単純な味なのに、心がほっとするような感覚。その時、食べ物は単にカロリーや栄養素を摂取するためのものではなく、心を満たすためのものでもあるということを実感しました。
また、食べ物との関係が変わると、他の生活習慣も自然と見直すようになりました。食事を大切にするようになると、睡眠の質にも気を配るようになり、運動も少しずつ生活に取り入れるようになったのです。
新しい発見：食べ物と記憶の関係
食との向き合い方を変えていく中で、面白い発見もありました。それは、食べ物と記憶の強い結びつきです。
ある週末、祖母の作っていたような味噌汁を作ってみました。その味を久しぶりに味わったとき、子どもの頃の記憶が鮮明によみがえってきたのです。祖母の家の縁側で食べた味噌汁の味、その時の風景や匂い、温かい気持ち。それまですっかり忘れていた記憶が、味をきっかけに蘇ったのです。
この体験から、食べ物には単に栄養を与えるだけでなく、記憶や感情を呼び起こす力があることを実感しました。それからは、時々意識的に「思い出の味」を再現してみるようになりました。それは私にとって、過去の自分とつながる特別な時間になっています。
読者へのアドバイス
私の経験から、食べ物との向き合い方を見直す際に役立ったポイントをいくつか紹介します。
- 小さな変化から始める：いきなり食生活を180度変えようとするのではなく、朝食を食べる、食事中はスマホを見ないなど、小さな変化から始めるのが続けやすいと思います。
- 「正しい食事」への固執を手放す：完璧な食事を目指すより、自分の体調や気分に合わせた食事を選ぶ柔軟さも大切だと感じました。
- 食べることを急がない：時間に余裕があるときは、ゆっくりと味わって食べる時間を大切にすると、少ない量でも満足感が得られることが多いです。
- 食事の準備も楽しむ：料理が苦手でも、シンプルな料理から始めて、食材を選んだり調理したりする過程も含めて楽しむと、食事の満足感が高まると思います。
- 自分の体調と食事の関連に注目する：どんな食事をした後に調子が良いか、悪いかを観察すると、自分の体に合った食事がわかってくると思います。
ただ、これらはあくまで私の経験に基づくものです。一般的には、栄養バランスの取れた食事を規則正しく摂ることが推奨されますが、具体的な方法は個人によって異なると思います。自分に合った食との向き合い方を見つけることが大切なのではないでしょうか。
まとめ：食べ物が教えてくれたこと
私の場合、食べ物との向き合い方を変えることで、単に体調が良くなっただけでなく、日々の生活に対する姿勢も変わりました。食事の時間を大切にすることで、自分自身と向き合う時間も増え、心の満足感を得られるようになったと感じています。
食べ物は単なる栄養源ではなく、私たちの記憶や感情、そして日々の暮らしの質に深く関わっているものなのだと実感しています。もちろん、私の体験はあくまで一例に過ぎません。でも、もし日々の食事に何となく満足していない、または食べることが単なる習慣になっているという方がいらっしゃれば、少し意識を変えてみるだけで、新しい発見があるかもしれません。
食べ物は私たちに多くのことを教えてくれます。それは栄養学的な知識だけでなく、自分自身の心や体との向き合い方、そして日々の生活の豊かさについてなのかもしれません。